スキンフィニティクリニック 医師の門沙央理です。
はっきりとしたシミは消えたものの、何を行っても変化を感じにくい薄いシミや色むらが残る、というご相談を受けることがあります。
こうした薄いシミや色むらは、従来のレーザー治療やフォトフェイシャルでは、対応が難しい場合があります。
では、こうした薄いシミや色むらに対して、どのような治療の選択肢があるのでしょうか。
レーザー治療は、1本の強い光を一点に当てる、いわゆるスポット照射が多く用いられています。
イメージとしては、懐中電灯の光を一点に照らすようなものです。
この方法は、境界がはっきりしたシミには有効ですが、薄いシミや色むらに反応させようとすると、出力を上げる必要が出てくることがあります。
その結果、エネルギーが一か所に集中しやすく、赤みや炎症の原因になることもあります。
そこで用いられるのがDOE(回折光学素子)です。
DOEを通すことで、1本のレーザー光は多数の非常に小さな点状の光に分かれて皮膚に届きます。
これは、表面に微細な凹凸模様をもつ透明なガラスを通すことで、壁紙に映る光が均一に広がるようなイメージです。

この仕組みにより、皮膚全体に刺激を分散させながら、均一にレーザーを作用させることが可能になります。
レーザーを分割して照射するいわゆる「フラクショナル治療」は以前から存在しますが、
その中で 532 nm DOE フラクショナルと混同されやすい治療として694 nm ルビーフラクショナルがあります。
ルビーフラクショナルは、DOEとは異なり、マイクロレンズアレイやマスク構造などを用いて、レーザー光を物理的に分割する方式です。
その一例として、レーザー光の前に穴の空いた構造を置き、穴の部分だけ光を通す方法があります。
穴を通らなかった光は遮られ、皮膚には届かないため、使用する光をあらかじめ間引く設計となっています。
ルビーレーザーでDOEが用いられない理由は、ルビーレーザーは、レーザーが皮膚に当たっている時間(パルス幅)が比較的長く、熱がたまりやすい性質をもつためです。
もしDOEで均一にレーザー光を集中させると、表皮の温度が一斉に上昇しやすく、熱傷や炎症後色素沈着のリスクが高くなってしまいます。
一方、532 nm ピコ秒 DOE フラクショナルは、694 nmよりメラニンへの吸収が強い波長であるにもかかわらず、パルス幅が非常に短く、反応の主体が熱ではなく衝撃波です。
そのため、DOEによってレーザー光を均一に分散させても、皮膚の安全域を保つことが可能になります。
このように、532 nm DOE フラクショナルはメラニンに強く吸収される波長を持ちながら、レーザー光を無駄に遮ることなく、安全に皮膚全体へ届けることができる治療です。
当院では、これまでどのシミ治療でも変化が乏しかったような薄いシミ、くすみ、色むらに対して、532 nm DOE フラクショナルが特に有効と考えています。
なお、肝斑がない方では、出力を適切に調整したうえで、治療効果を重視した照射が可能です。治療後には、2〜3日程度の赤みが出る場合があります。
本治療はすべて医師が施術を行っています。
一方で、境界がはっきりした点状のシミについては、ルビーフラクショナルやフォトフェイシャルなどが適応になると考えています。
肝斑がある方には、こちらのコラムでもご紹介しているように、532 nm DOE フラクショナルにトーニングを組み合わせたピコハイ・デュアルトーニングをおすすめしています。
532nm DOE フラクショナルは、はっきりとしたシミというよりも、これまでの治療で変化が乏しかった薄いシミや色むら、くすみに対して効果が期待できる治療です。
シミ治療の「次の一手」として、検討する価値のある選択肢と考えています。