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院長コラム

ゼオスキンの良い点と注意すべき点2020.12.1

コロナ禍で大きく販売数を伸ばしたと思われる医療機関専売品コスメはDr.オバジの『ゼオスキンヘルス』シリーズでしょう。SNS等で盛んに見かけるようになり、気になっている方も多いのではないでしょうか。

このシリーズがどうしてここまで注目されているのか、デメリットはないのかという点について私の意見を述べて参りたいと思います。

ゼオスキンはビタミンA系コスメ

Dr.オバジの名前を聞いたことがあるという方は多いと思います。この知名度の高さは日本では製薬大手がライセンス契約を行い、ドラッグストアでもDr.Obagiブランドの基礎化粧品が販売されているためかと思います。ビタミンCのセラムなどが有名でしょう。実際に店頭で目にすることも多いですし、TVでCMを見かけた方もいらっしゃると思います。

ゼオスキンヘルスは医療機関専売品ですので、これらのドラッグストアで見かけるDr.オバジのコスメとは全く別物といってよいでしょう。ゼオスキンの特徴を一言でいえば「ビタミンA系コスメ」の範疇に入るということがポイントになります。

「ビタミンA系コスメ」の考え方

ビタミンA系のコスメで有名なものにはもう一つあります。それは南アフリカの形成外科医のDr.フェルナンデスが開発した「エンビロン」です。当院でも6年前から取り扱っておりますが、エンビロンのファンの方も多く、長年愛用している方にもよくお会いします。

これらのビタミンAコスメの考え方は以下のような理論に基づいています。

  1. 肌にはビタミンAがビタミンA誘導体として様々な形で存在している
  2. 9割がパルミチン酸レチノールや酢酸レチノールという安定した形で存在(貯蔵されている)
  3. レチノール、レチナール、レチノイン酸の不安定な形では数パーセントずつ存在
  4. 様々な形のビタミンA誘導体は必要に応じて皮膚内部でレチノイン酸に変換される
  5. レチノイン酸は皮膚のターンオーバーを早め、コラーゲン増生を刺激して弾力と潤いを保つ働きがある
  6. 加齢変化により貯蔵されるパルミチン酸レチノールや酢酸レチノールの量は減ってしまう(その分補充が必要となる)

いろいろと難しくなりますが、簡単に言えば

加齢変化で減少している「皮膚に貯蔵されているビタミンAの仲間」をしっかりと補うことで、以前のような肌の「生き生きとした感じ」を取り戻せますよ。

という考え方がビタミンA系を主成分として配合しているコスメの根底にあります。

エンビロンとゼオスキンヘルスの違う点

エンビロンもゼオスキンヘルスもビタミンA誘導体を配合したビタミンA系コスメである点は共通していますが、その考え方には若干の違う点があります。

エンビロンはビタミンA誘導体の中でも、本来皮膚の中で安定して存在していることの多い形状のパルミチン酸レチノールやプロピオン酸レチノールを主成分として配合しているラインナップが多く、しかもそれらの濃度を徐々に慣らしながらステップアップしていくという方式です。濃度のステップアップも1,2,3,4などとそれぞれのラインで数字が振られているのでわかりやすくなっています。さらにこれらの成分はビタミンA誘導体の形の中でも皮膚の刺激性は比較的少ないので、エンビロンの場合は多くの方が嫌な反応をそれほど経験せずに無難にビタミンAコスメを自分のものとして取り入れやすいのではないかと思います。

一方でゼオスキンの場合には皮膚への刺激のマイルドなパルミチン酸レチノールを主成分としたデイリーPDやRCクリームという商品で初めての方はスタートするという点は同様ですが、ステップアップの段階ではエンビロンのようなきめ細やかさはあまりありません。効果も高まりますがスキンブライセラムやWテクスチャーリペア、ARナイトリペアなどのアクティブビタミンAシリーズと分類される皮膚への刺激性も高まるレチノールを主体とした製品へのステップアップとなります。

やや皮膚刺激性の強い「レチノール」を主成分として、ある程度の濃度で入れはじめたものはエンビロンでは一番強いラインナップにあたるAブーストシリーズになります。ゼオスキン独自のビタミンAの安定化法などがあったりしますので、成分だけでの比較は難しい部分はありますが、

「攻めのゼオスキン」「守りのエンビロン」

などと言われることが多い理由はこのあたりにあります。

ビタミンAによる皮膚への刺激反応は「A反応」とも言われ、赤みやかゆみ、皮ムケなどの症状で、刺激反応が最も強いレチノイン酸ではボロボロと皮膚が剥けるような反応が必発となります。

エンビロンの場合にはこのA反応を極力最小限にするために刺激性の少ないパルミチン酸レチノールを低濃度から徐々にゆっくりとステップアップしていくことができるので、不快な症状を全く出さずに徐々にステップアップを狙うこともできます

それに対して、ゼオスキンの場合にはそこまで細かな設定はないため、次のステップに進んだ場合、エンビロンでは何段階も飛び級したぐらいのステップアップとなります。そのため、ゼオスキンの場合にはステップアップした場合のA反応の回避はエンビロンと比較すると難しくなります。そのため、「ゼオスキン⇒剥ける」というイメージを持たれている方が多くなります。

コロナ禍が幸いしてゼオスキンが拡大

赤みや皮ムケといったダウンタイムを覚悟の上でスタートし、はじめに強い反応をさせイチ早い効果実感を狙うという部分がゼオスキンにはあると思います。通常では受け入れてくださる方が多いとは言えなかったこのコスメの取り入れ方がコロナ禍という特殊な状況が幸いしました。マスク生活が当たり前となりテレワークの方も増え、ダウンタイムを許容できるというタイミングの方が非常に多かったのです。

A反応というのはその人にとって適切な濃度まで達すれば、その濃度と頻度で使い続ければ慣れてなくなっていき、肌にとって良い効果だけが得られる安定した時期が訪れます。特にエンビロンではここを目指してゆっくりと嫌な反応を極力出さないようにステップアップしていくわけですが、コロナ禍によりいきなり飛び級のスタートであるゼオスキンを受け入れやすい環境となっていたと思います。当然、ダウンタイムを乗り越えながら始めるゼオスキンの方がより多くの人が早期に効果も感じやすくなりますので、SNS等で話題となり、人気化したものと思います。

さらに、ゼオスキンには最もアグレッシブにビタミンAを作用させる「セラピューティックプログラム」というものが存在します。これは市販の化粧品への配合はできず、医師の処方が必要なレチノイン酸を用いるものです。

シミの改善や肌のハリ感アップなどの即効性を狙う位置づけのメニューとなりますが、レチノイン酸の場合には強いA反応は必発で赤みの後に皮膚がどんどんと剥けてきます。剥けるということは皮膚のターンオーバーが急速に早まっているということですが、古い角層の皮膚がごっそりと剥けて基底層から生まれたての生きのいい細胞が表皮近くに現れるため、向け終わった直後は「ツルっと」した感動を感じます。

この剥けている最中のダウンタイム中の写真や、向け終わった直後のムキ卵状態のピカピカの皮膚がSNS等で多く見られるようになりました。

ゼオスキンの注意点

ゼオスキンはエンビロンと比較するとやはり全体的に「攻め」という印象は確かにあります。レチノール以外の主成分として注目に値するのはシミへの有効成分としてはハイドロキノンを採用している点も挙げられます。ハイドロキノンを4%という比較的高濃度で配合したミラミンやミラミックスという製品です。

ハイドロキノンは肌に合わない人もいますので、レチノールを主成分とした製品と両方とも同時に同エリアに塗り始めると、A反応によるかゆみなのかハイドロキノンによるかぶれなのかわからなくなることがあるので注意しなければなりません。またハイドロキノンは長期使用時は休薬することが推奨されている成分ですので、漫然と半年近く塗りっぱなしなどとならないように気をつける必要があります。

このミラミンやミラミックスには乳化剤としてラウリル硫酸Naが使用されているようですが、あまり日本国内で流通している化粧品ではその刺激性の高さからほとんど使用されることのなくなっている成分です。表皮のタンパク質を変性させる作用で、バリアをあえて破壊してハイドロキノン等の有効成分の浸透を高めようとしているのかもしれません。

ゼオスキンは多くの製品にピーリング成分も入れているようですし、バリアを破壊するような成分も一部製品に入っています。レチノールで新しい肌細胞をどんどんと生まれさせて、古い者はどんどんとピーリングで剥がし、皮脂もとってバリアも壊して塗った成分の浸透を良くしていく。ゼオスキンをラインで使用した場合には実際にそういった状況下に肌を保ち続けるということになります。

この環境にうまく肌がちょうど良く反応してくれる方にとってはこれ以上無いベストコスメとなると思いますが、人によっては部分的に湿疹のような症状がでやすい状態となったり、肌が敏感になったりする人もいます。皮膚表面の常在菌のバランスを崩さないように他の保湿系コスメの併用が必要な方もいらっしゃいます(当院ではSDシリーズ併用が人気)。

また、長く使っていると以前ほど強い反応を感じなくなってきて物足りなくなり、必要以上に強いものを塗りすぎてしまう傾向になる人もいますのでこの点も注意が必要です。常に赤ら顔気味になったり、皮膚表面のキメが消失して光を不自然に反射するようになることで感じる「ビニール感を感じる肌」となることもあります。

専門家のアドバイスをしっかりと受けて自分に合った使用方法を見つけることが大切です。