特にクレーター状のニキビ跡は瘢痕といういわば傷跡の状態です。この部位は皮膚だけでなく皮下組織とも癒着という現象が起こり、下に強い力で引き込まれています。これがピーリングや軽めのレーザー治療ではクレーター状のニキビ跡が一向に改善しない理由です。
これまではフラクショナルレーザーという種類のレーザー機種が第一選択として使用されることがほとんどでしたが、日本国内でもダーマペン4を第一選択とする施設が増えてきました。
これはフラクショナルレーザーを効果を重視してかなりアグレッシブに治療を行った場合と比較しても、ダーマペン4の方が少ない回数で早く良好な結果が得られる傾向が強く、さらに赤みなどのダウンタイムが短いということが原因です。
こちらにつきましては過去の記事で詳しくお話しておりますのでご覧ください。
ニキビでお悩みの方は初期の白ニキビ(コメド)や炎症を起こした赤いニキビ、膿が溜まっているような炎症のこじれたニキビ、そしてそれらが治った後に引き連れとして残ったクレーター状のニキビ跡というようにそれぞれすべての段階が混在している状態の方もいらっしゃいます。
結論から申し上げますと、炎症を起こしているニキビに関してはダーマペン4は炎症を早く沈めてニキビ跡になりにくくしてくれる作用がありますので、その部位を避けたりせずにむしろ積極的に治療を行います。
日本国内への導入前にダーマペン4の開発元のオーストラリアのダーマペンワールド本社に訪れた際のディスカッションでもこの点は確認しましたが、
「赤いニキビができるとなるべく早くダーマペン4をニキビの部分にもやってもらうのよ。そうするとすぐに治るわ」
と社員さんも口をそろえておっしゃっておりましたし、現地のクリニックの視察でも同様の見解のドクターばかりでした。
しかしながら、炎症を起こしている赤いニキビや膿が貯留しているような膿胞に対してダーマペン4を積極的にむしろ行う場合には注意しなければならない点がいくつかあります。
この2つは処置を行う施術者も受けていただく皆さまも頭に入れておく必要があります。
①は炎症部位が痛みに敏感になっていることに加え、そもそも麻酔のクリームの主成分(リドカインなど)は炎症がある部位では効果が減弱する性質がある点があり、微小な膿瘍などがあると浸透自体も良くなくなることが一つの原因です。痛みに弱いという方は炎症部位は避けてもらい、塗り薬などの方法で炎症の鎮静を目指す方法に切り替えるのも良いと思います。
炎症性ニキビがダーマペン4の適切な処置により早く治まる理由としては、微小な膿が排泄されることに加えて針刺激により放出される各種グロースファクターなどの因子が組織修復を促すとともにターンオーバーを早めることにあると考えられています。
そのためニキビが多くでき始めた人に対してダーマペン4による治療を行うと、まだ大きく目立ってはいない小さなニキビが好転反応のように出てくることがあります。これは重度のニキビ、ニキビ跡治療を目的としてダーマペン4を初めて行う方に起こりやすい現象ですが、治療後数日~1週間程で一時的にニキビが増え、悪化したように感じる時期で、これが②にあたります。
ただしこの現象は多くの方は初回に見られるもので、継続していくにつれて悪化するような印象はでなくなるばかりか、新たなニキビができにくい肌質に根本から変化していく方がほとんどです。
重度の炎症性ニキビが多い方はダーマペン4だけの赤みの経過に加えて、一時的にニキビが増えたように見える時期がでる可能性を踏まえてその後のスケジュールを組み、初回の治療を行うことがお勧めです。
ダーマペン4の技術指導医の役割を開発元のダーマペンワールド社から任命されてから、日本国内で講演会を行ってまいりました。日本版の施術者向けのマニュアル作成にも関わって参りましたが、マニュアルという性質上、初心者の方でも問題なく治療が完結する内容を選ぶ必要があります。
日本版マニュアル上は炎症性ニキビは避けるようにという記載をどうしてもしておりますので、様々なクリニックでダーマペン4の紹介欄で「炎症性ニキビがあるとできない」という記載がここから生まれてしまっております。
しかし、ここまでお話したように炎症の度合いに応じて針の深さや刺し方を調節するなどで良い結果を出すことも可能です。
施術者の技術に不安が残る場合には炎症性ニキビに対しては避けてもらうように伝えるのが無難かもしれませんが、技術面で信頼できる施術者であればむしろ上記の2つの点に注意してスケジュールを考え、依頼してみるのも良いと思います。