前回の記事では肝斑(かんぱん)についての新しい知見についてお話しました。これらの新たな発見を踏まえて、私の肝斑治療はここ1~2年で大きく変化してきました。
このようなご経験をお持ちの方は、肝斑に対する治療のアプローチを見直してみる必要があるかもしれません。
肝斑といっても細かくマニアックに分類するといくつかにわかれ、それぞれの経過や治療法、そして原因などが異なるということは数多くの肝斑の患者様を日々診療している医師はなんとなく感じていることと思います。
正確な分類が困難な部分もあるため、教科書などで系統だってまとめられている概念ではないですが、経験豊富なドクターは
「このタイプの肝斑はこちらのアプローチよりもこっちの方が簡単に治ることが多い」
などと、経験に基づいてより効率の良い肝斑治療メニューを組むことができます。
さまざまな肝斑のタイプの中でも、従来のトーニングやピコトーニング、トラネキサム酸の内服などのオーソドックスな治療に反応が悪いケースや治療中断後に簡単に再発傾向となってしまうケース、そして毛細血管の拡張を伴う赤ら顔併発タイプの肝斑については積極的に基底膜アプローチを行って良い成績を上げてきました。
この基底膜アプローチとは、肝斑部分では基底膜が薄く、もろくなっていることが多いという報告を元に、従来のしっかりとした基底膜に強化することで、メラニン色素が深部、深部へ沈着しやすくなっている状態を解消することを目指す肝斑の根本治療を目指す新たなコンセプトです。
注)「肝斑の基底膜アプローチ」という言葉は私が勝手に呼んでいるもので一般的な言葉ではありません。
シリコンバレーで基底膜強化のために開発された世界初のマシンが「シルファーム(Sylfirm)」です。
SR3 Technologyという技術をベースとした新たなマシンですが、微細な針を皮膚内部に刺入して、先端から放出される特殊なパルス上のRFにより治療が行われます。
針は微細ですので、塗る表面麻酔クリームなしでも十分耐えうる程度の軽い痛みですので、心配な方は麻酔を使用すればほぼ無痛で治療は終了します。
この特殊なエネルギーの特筆すべき点は、基底膜と異常に開いた毛細血管に対してのみ主に作用するというところです。まさに肝斑や赤ら顔の治療のために作られたマシンといえます。
基底膜アプローチを取り入れる場合には私は現状ではシルファームを最も多く使用していますが、その他にもダーマペン4やリバースピールなどを症状や生活背景などを元に選択しています。
この2年ほど、肝斑の方を数多く診察して治療を行っていく中で積極的に適応のある方には基底膜アプローチを行って参りました。その経験で感じるのは、このアプローチを加えると肝斑の治療効率が上がって短期間に症状が良くなることが多いことに加え、治療終了後も再発が非常に少なくなるということです。
基底膜のもろさがすべての肝斑の原因ではないとも感じていますが、大多数の例で関係していることは確かだと思っています。それに加えて、毛細血管拡張による赤ら顔の軽減に関しても非常によい結果がでています。
トーニングやトラネキサム酸などの内服治療は治療期間中は確かによくなりますが、やめると徐々に再発する例を多く経験します。これらの治療はあくまで症状を一時的に軽減する治療であって、肝斑の根本にアプローチしていない可能性があると感じています。
私は現在では多くの肝斑の方に関してまず始めに基底膜アプローチを行っています。基底膜を強化することでメラニンが深層に落ち込むことを防ぎ、より「抜けやすくなる」ようなイメージです。
基底膜強化によるベースを作った上でピコトーニングやトラネキサム酸などの内服治療を行うことで効率化と再発防止を図っています。