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院長コラム

宇宙人が人体に異物を残すことは可能か?2022.8.19

Skinfinity clinic院長の橋本です。

8月15日19時に放送されました、TBS『THE未科学ワールド』という3時間特番におきまして医療監修としてお手伝いさせていただきました。これまで様々なドラマやバラエティ番組などの医療監修は数多く行ってまいりましたが、今回はあらゆる超常現象を最新の科学によって真実を追求するという、少し風向きが変わった内容でした。

さらに今回監修を依頼された部分は「未確認飛行物体や宇宙人」のパートで、40年以上前に未確認飛行物体に遭遇して体内に異物を埋め込まれたという可能性を主張する2人のアメリカ人男性について科学的に検証するという内容でした。

まだご覧になっておられない方は、Tverにて見逃し配信を行っているそうなのでご覧ください。冒頭の40分ほどのパートです。

制作段階では表現が専門的で、難解でわかりにくい部分がございましたので、医学的にも矛盾のないようによりわかりやすく表現するお手伝いをさせていただいております。ここでは番組の構成とは切り口を変えて、私個人の専門家としての意見を書かせて頂きます。

皮膚に傷を残さず異物を埋め込むことは可能か

番組で登場した2人の男性の腕にはそれぞれ、確かに異物が存在していました。

1人目のスティーブさんの腕の皮下にある異物の方が大きく見えましたが、小指より細いぐらいに見受けられました。実際は表面からつまんだり押したりして突出させた異物の見え方というのは、皮膚の厚みを二重に含んでいるわけですので、このような大きさに見えても実際に取り出してみると一回り小さいことが多くなります。

さらに今回は40年以上前の突如現れた埋入物だと本人が主張しておりますので、その異物周辺に組織反応が起こることでコーティングされるように、さらに一回り大きくなっている可能性も否定できません。

埋め込む際にある程度小さく、しかも紡錘形や筒状のような細長い形状であれば針内部に充填するような埋め込み器具によって数秒で皮下に注射のように異物を置いてくることは実は可能です。しかもその場合、やや大きめの針穴が短時間残るだけですので数日から一週間程度すれば傷跡はほぼ消失します。スティーブさんの異物の場合はこのような注入デバイスで傷跡を将来的に残さず留置できるギリギリの範囲内の大きさのように思います。

医療においても二の腕の内側に埋め込むような、ボールペンの芯ぐらいの筒状の避妊具が昔からありますが、注射器のようなデバイスで瞬時に埋め込みます。この場合、なるべく傷跡が残らないように皮膚をなるべく引き延ばした状態で針を刺します。

15年ほど前にこの皮下埋め込み型避妊具のスムーズな摘出方法について論文にしたこともあります

一方で2人目のティモシー・カレンさんの異物の場合には1例目の異物よりもさらに小さいですが、皮下というよりも筋層内もしくは骨膜上という深い部分に存在する金属片のようにX線透視映像では見えました。大きさ的にはかなり小さいだけでなく、三角形の金属片に見えます。特製の注入用デバイスを作成して注射のように入れることも可能な大きさだと思いますが、噴射させて皮膚から弾丸のように突き刺すことも可能な形状です。1例目よりもサイズは小さいですので、長期的に傷跡はより残りにくいサイズだと思います。

つまり、番組内で登場した専門家の先生方とはこの点では私の見解は異なり、大きさからすると本人に気づかずに異物を注入できる可能性は十分に残されていると私は思います。

どうして直後に本人が気づいていないのか

このようにやや太めの針であれば、ある程度太くても長期的には傷跡がどこかわからない程度になってしまいます。しかし問題は、注入時は痛みますし直後に全くの針穴もゼロの状態で異物を皮下に埋め込むことは不可能という点です。やや太めの針穴や金属片噴射による皮膚の穴があいた直後は通常は多少血がにじみますので、流血で気づく可能性があります。そのため、止血テープやボンド等で固定すれば瞬時に穴をカバーする必要がありますが、これらのカバー類があれば本人が気づくはずですので針穴を数分の間、手で圧迫止血したということになります。

「未確認飛行物体と遭遇した瞬間から意識を数時間失っていた」と本人たちは証言していますので、注入時の痛みも感じておらず、止血まで完了できる余裕がありますので、やろうと思えば可能ということになります。意識を戻した直後で衝撃的な体験をしたことに気づき興奮をしている際に、腕の小さな針孔や切り傷に気づかなかかった可能性も否定できるものではありません。

1例目スティーブさんのケースの私の見解

実は一人目のスティーブ・マンデーさんのような皮下異物は日常診療では頻繁に出くわしますが、そのほとんどが、石灰化上皮腫や脂肪腫、血管脂肪腫、血管腫などといった皮下の良性腫瘍のなかまです。物質分析や病理学などの各エキスパートの先生が調査をしておりましたが、金属であることは確かとの見解でした。もしそれを信じるのであれば良性腫瘍とは異なる特長です。金属が外から入り込まない限りあれほどまで大きくなることは考えにくいため、本人の主張する宇宙人も含めた第三者もしくは自らが意図的に入れた可能性が高くなります。

しかし疑問点がいくつか残ります

  1. なぜすぐに取り出さなかったのか?
  2. なぜ今、取り出したくないのか?

通常であれば、このような異常体験の翌日にあれほどの異物に突如気づいた場合、特に親は摘出を試みるのが普通だと思います。摘出は数分で終わるような非常に簡単な医療技術ですので、40年以上前であったとしても何ら変わりません。局所麻酔の種類まで現在と一緒です。なぜ翌日に突如あらわれた異物に気づいたときにそのままにしたのか。そして、今現在は磁気異常等で不便を感じながらもどうして「取り出したくない」のか。

一連の流れはどうしても腑に落ちませんが、今現在スティーブさんの皮膚の下に異物が存在していることは確かです。すると考えられるのは、2人目の科学者として登場したカリフォルニア大学のマイナー博士の見解の通り、1人目の科学者のミン博士の検証に不備があると私も感じました。

金属であると最終的に両博士が意見を一致させた判断材料が、「周辺よりも温度上昇が早い物質」という情報でした。しかしマイナー博士はこれを情報として聞いただけであって、まさかドライヤーで熱を10秒間当てることで検証した温度変化であるとは思っておられないと思います。熱風を出っ張りに向けて照射すれば、下に何があるのかは関係なくそのでっぱりの中心から温度が上がりやすくなる可能性が高くなってしまいます。

皮膚自体には血流もありますし、ある程度の熱緩衝作用もありますので、たった10秒ほどでは皮膚の下ではなく皮膚表面の温度変化しかサーモグラフィーではとらえていない可能性が高いと思います。

もしこれらの実験を私が試みるのであれば水風呂に入ってもらった後、その直後にサウナに入ってもらいそれぞれでの温度変化を見ていきます。さらに重要なのが、温度変化は血流にも依存してしまうため、血流の乏しい良性腫瘍であれば今回のミン博士と同様の結果となってしまうということです。

つまり1例目のスティーブさんのケースを私の見解をまとめますと、

「そもそも金属であると断定できる状況ではない。超音波エコーもしくはX線等での画像診断をしたいところ。40年前のエピソードには不可解な点が多く、通常の皮下良性腫瘍に何かをきっかけにして気づいただけではないだろうか。数分で傷跡もほとんどわからずに摘出できますので、摘出して病理検査をすればすべてがはっきりとします。」

ということになります。

2例目ティモシー・カレンさんのケースの私の見解

ティモシーさんの例はすでに摘出され、成分分析済みですので比較的わかりやすくなります。酸化鉄ということですので、小さな鉄片が何らかの原因で飛んできて手首の親指側付近に刺さったという小さなケガを、自分が気づかない何十年の間にしていた可能性が高いと思われます。外で釘を打つようなご職業のようですので、電動ノコギリや電動草刈り機などにより高速で飛んできた小金属片が皮下に埋入されるような事例は多数の報告があります。時間を経て酸化された状態となっています。

40年前に奥様と一緒に車の中からみたものが30m長のUFOだったのかどうかの検証は今となっては不可能ですが、少なくとも今回の皮下異物のエピソードとは切り離して考えなければなりません。その出来事から異物も感じずに暮らしていた20年後にたまたま見つかった皮下異物に対して、摘出前に科学者が放射線を測定したりして調査する理由はありませんし、通常の異物摘出の治療が行われたに過ぎないと考えるのが普通です。

「宇宙人」はきっといます

なにかすべての超常現象を否定しているような感じになってしまいましたが、私はこのような夢のある話は嫌いではありません。広い宇宙の中に、人間のような知的生命体が地球にしか存在しないと考える方が不自然だと思っているからです。われわれ人間と同じような容姿を持っているとは思いませんが、地球外知的生命体はいると思っています。

宇宙の話も好きですので、フロリダのケネディ宇宙センターの見学ツアーにも行ったこともあります。そこでも、「歴代の宇宙飛行士の中ではUFOを目撃している人は意外と多い」という話も実際にありました。我々が生きている間に「宇宙人」が地球にアプローチしてくるかどうかはわかりませんが、いつあってもおかしくはないとも思います。

今回のようなスティーブさんやティモシーさんのような証言は、一つ一つ丁寧に分析していくことには大きな意義があると思います(大変ですけど)