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ドクターコラム

口周りや顎に繰り返すにきび2025.12.23

スキンフィニティクリニック医師の門沙央理です。

成人女性において、口周りや下顎といった下顔面やフェイスラインに集中するにきびをよく診ます。これは、特に月経前に悪化することが多く、標準治療(にきび外用薬など)への反応が乏しいケースも少なくありません。
これは治療が効かないのではなく、病態が異なるという視点が大切です。ではどういう病態なのかを説明していきます。

下顔面・フェイスラインの毛穴と皮脂腺からなる毛包脂腺系は、アンドロゲン(男性ホルモン)の影響を受けやすく、血中のホルモン値が正常であっても、局所のホルモン感受性の違いによりにきびが生じやすくなることがあります。
また月経周期に伴うホルモンバランスの変動により、月経前は相対的にアンドロゲン作用が強くなるためこの部位にできるにきびは月経前に特に悪化する傾向にあります。

アンドロゲンの刺激を受けると、皮脂腺や毛包上皮(毛穴の内側をおおう皮膚)の働きが変化します。
その結果、皮脂分泌の増加や皮脂の質的変化が生じると同時に、毛包上皮の角化が乱れ、毛穴の出口が狭くなります。

これらが重なることで、毛包内で炎症が起こりやすくなり、にきびとして表面化します。

したがって、これらの病態をふまえると、抗菌薬や角化異常を改善する外用薬による標準治療を行っても、にきびを繰り返してしまう理由が説明できます。

このような場合には、毛包内の炎症だけでなく、背景にあるホルモンの影響にも目を向けた治療を検討することが重要になります。

ホルモン治療:ピルとスピロノラクトン

ホルモンの影響が疑われるにきびに対しては、ピルとスピロノラクトンという治療選択肢があります。

月経不順や月経前症状を伴う場合には、ホルモンバランス全体を整える目的で、ピルが選択されることがあります。その際には、広尾まきレディスクリニックの婦人科医である手塚真紀先生と連携して治療をすすめてまいります。
一方で、月経周期が比較的安定しているにもかかわらず、下顔面・フェイスラインのにきびが目立つ場合には、アンドロゲン作用そのものを抑制するスピロノラクトンが適した選択肢となることがあります。
スピロノラクトンは単体で開始することもありますが、使用中に月経不順や不正出血などの症状がみられた場合には、副作用対策として、必要に応じてピルの併用をご提案しています。

なお、にきび診療において、血中ホルモン値の測定はすべての症例で行うわけではありません。
多くの女性では、血液検査上のホルモン値が正常であっても、皮膚におけるホルモン感受性の違いにより、下顔面を中心としたにきびが生じることがあるからです。

そのため、治療選択においては、血中ホルモン値よりも、にきびの分布や月経周期との関連といった臨床的な所見を重視しています。
ただし、内分泌的な異常が背景にある可能性が考えられる場合や、血中ホルモンの評価を希望される場合には、当院と連携している婦人科へご紹介し、必要に応じて適切な検査を行っています。

ホルモン治療以外の選択肢

一方で、ホルモン治療に慎重な方や、まずは別のアプローチを希望される方に対しては、こちらのコラムで解説しているように、漢方治療から開始することも有力な選択肢の一つです。
漢方薬は、ホルモンそのものを直接調整する治療ではありませんが、体質や月経周期に伴う変化を整えることで、結果としてホルモンバランスの揺らぎに間接的に作用すると考えられています。

当院では、外用薬などの標準治療を基本としながら、症状やご希望に応じて漢方治療やにきびに対するレーザー治療を組み合わせ、一定期間の経過で効果を評価し、必要に応じてホルモン治療も含めた治療方針を検討しています。

まとめ

下顔面やフェイスラインににきびを繰り返し、標準的な治療だけでは改善しにくいと感じている方や、病態から見直した治療を検討したい方には、ホルモン治療や漢方治療といった選択肢があります。

症状に応じた治療をご提案しますので、気になる方はぜひご相談ください。

参考文献

1) Deng Y, et al. Skin Barrier Dysfunction in Acne Vulgaris: Pathogenesis and Therapeutic Approaches. Med Sci Monit. 2024;30:e945336.