スキンフィニティクリニック医師の門沙央理です。
フォトフェイシャルは、顔全体に照射し、細かいシミをザーッと均一に減らしていけることが特徴とこちらのコラムでお話しましたが、大きさのあるシミや深いシミは、スポットのレーザー治療が必要になります。
シミ取りのスポットレーザーは、しっかりかさぶたになって、それがはがれてシミがとれるというイメージをお持ちの方も多いと思います。このような経過をとるのはいわゆるナノ秒レーザーによる治療です。
レーザーの違いを理解するうえで大切なのが「パルス幅」という概念です。
これは、1回のレーザー照射がどれくらいの時間続くかを示すもので、照射時間が長いほど熱が周囲に伝わりやすくなります。
ナノ秒レーザーは照射時間が比較的長いため、メラニン色素を熱で破壊する「光熱効果」が中心です。
その熱が周囲の組織にも伝わるため、軽い炎症やかさぶたが起こりやすくなります。(下記左図)
一方、ピコ秒レーザーは照射時間がはるかに短いため、熱が広がる前に照射が終わるのが特徴です。
その結果、熱ではなく「衝撃波(光機械的効果)」によってメラニンを細かく砕き、周囲の皮膚へのダメージを最小限に抑えることができます。したがって従来のシミ取りと違い、かさぶたができにくい治療です。
また当院で用いているピコハイ(PICOHI)・スポットレーザーは、これまでのどのピコ秒レーザーよりも短いパルス幅(光を出す時間)を持ちながら、ピークパワー(瞬間的な出力)が高いことが特徴です。
わずかな時間で強いエネルギーを安定して出せるため、メラニン色素をより細かく効率的に砕くことができます。(下記右図)
その結果、他のピコ秒レーザーよりも高い効果で、シミなどの色素性病変にアプローチできます。


【左:ナノ秒レーザー照射後の変化】 【右:ピコハイ(PICOHI)・スポットレーザー照射後の変化】
照射直後からうっすら濃くなり、濃くなっている期間はおよそ10日~14日間ほどで、ADM(後天性真皮メラノ―シス)などの深いシミの場合はそれよりも長い可能性もあります。
これはレーザーにより破壊されたメラニンが皮膚表面に押し上げられているためで、いわば「メラニンの排出が進んでいるサイン」です。濃さは、コンシーラーなどで隠せる濃さであり、テープ保護も不要です。

左:before 右:照射2日後
皮膚の表面に近いところにメラニンがある、浅いシミだとこのように一回の照射でとれます。

しかし深い層にあるシミは、メラニンを少しずつ分解していく必要があり、一度の照射で取り切れないこともあります。
そのため、肌への負担をかけずに確実に反応を促すため、複数回にわたる照射が必要になることがあります。
照射直後からシミが濃くなり、その後薄くなるのが通常です。しかし薄くなっていたものが照射から1か月前後に一時的にシミの色が戻って見える、もしくは以前より濃く見えることがあります。
これは「炎症後色素沈着(PIH)」と呼ばれるもので、レーザー照射による炎症反応の一環です。
ピコ秒レーザーはナノ秒レーザーに比べて熱による損傷をほとんど起こさないため、色素沈着のリスクは大幅に減っています。
それでも、もともとの肌が暗めの方(スキンタイプⅢ〜Ⅳ)では、明るめの肌の方に比べて色素沈着を起こす可能性がやや高くなります。
(※目安として、蚊に刺された跡やニキビ跡が茶色く残りやすい方は、色素沈着を起こしやすい傾向があるとされています。)
色素沈着を疑った場合は、レーザー照射を一旦中止して外用治療に切り替えます。数か月外用を継続していただき、十分に元の薄さに戻ったことを確認してから、再度慎重にレーザー照射を検討します。
細かいシミはフォトフェイシャルで全体的に改善し、残ったシミをピコハイのスポット照射でピンポイントに仕上げていくのが、肌への負担を最小限に抑えたリスクの少ないシミ治療の流れと考えます。
全体治療と部分治療をうまく組み合わせることが大切です。