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ドクターコラム

顎下のたるみの原因2025.11.4

スキンフィニティクリニック医師の門沙央理です。

顎下のもたつきを気にされて来院される方は多く、その原因を脂肪と考え、脂肪溶解注射を希望されるケースがよく見られます。
もちろん脂肪が要因の場合もありますが、実際には顎下の「ゆるみ」や構造的変化によって輪郭が崩れているケースも少なくありません。

顎下のたるみの根源

広頚筋は鎖骨付近の皮膚・筋膜から起こり、皮膚の延長として膜状に広がり下顎骨の下縁付近で終始します。しかし広頚筋は下顎骨そのものにはしっかり付着せず、薄い線維性の組織を介して間接的に支えられています。したがって骨にしっかり固定されているわけではありません。

若いころは広頚筋が筋肉として十分に厚みと緊張を保ち、それを支える周囲の靭帯や皮下結合組織が下顔面から頚部の張りを維持しています。これらの靭帯や結合組織は、下図のように皮膚から骨膜にかけて縦に張る支柱構造として機能し、広頚筋を含む皮膚層全体を下方から支えています。

広頚筋と下顎骨間の付着のゆるみこそが顎下たるみの起点

広頚筋と下顎骨はもともと直接的な付着が非常に少ない構造であるため、その脆弱な付着が加齢によりゆるむようになり、広頚筋が「下顎骨から滑り落ちる」ように下がり、かつ広頚筋が収縮により長期間にわたって下方に引っ張られることで、顎下のもたつきが出現します。
こうして、骨との接触が失われることで、下顔面から顎下にかけてのフェイスラインが崩れやすくなります。

加齢により広頚筋の厚みが失われると、筋線維が部分的に分離(diastasis)して首の縦バンドとして現れることもありますが、顎下のもたつきは、主として下顎骨との付着のゆるみに起因します。

頚部の支持靭帯のゆるみ

顎下のたるみの主因は付着部のゆるみですが、増悪因子として、上記で述べた頚部の支柱構造の張力低下があります。これらの支持線維も加齢で緩み、下方からの支えが弱まることで、顎下のたるみがさらに助長されます。

顎下ハイフによる付着部の強化

顎下ハイフは、広頚筋を包むSMAS相当層および下顎骨をつなぐ線維性支持組織をターゲットとして、骨膜付近の支持構造を強化するアプローチです。

顎下のもたつきに対し、脂肪溶解注射を繰り返しても変化が乏しい場合、その主因は「脂肪」ではなく「支持構造のゆるみ」にある可能性があります。
原因が脂肪なのか、あるいは構造的なたるみなのかを見極め、それぞれに適した治療を選択することが重要です。

 

参考文献
1) Trindade de Almeida A, et al. Platysma Prominence: Review and Expert Analysis of Clinical Presentation, Burden, and Treatment Considerations. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2025 Feb 5;13(2):e6490.
2) Mendelson BC, et al. Facelift Anatomy: SMAS, Retaining Ligaments, and Facial Spaces. In: Nelligan PC, ed. Plastic Surgery: Volume 2 – Aesthetic Surgery. 3rd ed. Elsevier; 2013.