ビタミンCは、シミ、小じわ、毛穴といったお肌のあらゆる悩みに網羅的にアプローチできる化粧品です。もし化粧品を一つだけ選ぶとすれば、私はビタミンCを推奨します。年齢を問わず取り入れやすい点も魅力です。
さらにビタミンCは強力な抗酸化作用と抗炎症作用をもち、紫外線防御にも貢献します。紫外線による細胞障害が生じてからビタミンCを後添加するより、予めビタミンCを前添加したほうが紫外線による障害を防ぐ効果が高かったという研究があり、ビタミンCは夜ではなく朝に塗ることが推奨されます。朝に塗る予防的ビタミンCケアにより、日焼け止めの補強として、紫外線ダメージを軽減する働きがあります。
しかし、ビタミンCは人間の体内では合成できないので、外部から補う必要があります。経口摂取した場合、ビタミンCは各臓器に移行しますが、皮膚に十分量のビタミンCが届かせるには一定の量が必要になり、なおかつ腸管からのビタミンCの吸収速度や吸収率に左右されるため一定量を保つのは難しいと思われます。
したがって、皮膚でのビタミンCを一定量に保つために、日々のスキンケアとして皮膚に直接塗布することは非常に有用です。
塗るビタミンCは色々な製品がありますが、当院ではビタミンCとしてロート製薬株式会社のDRX®VCコンセントレート15bを取り扱っています。
なぜ、この製品を数ある製品の中から選んだのかを、このあと述べていきます。
一般にビタミンCと呼ばれるのはL-アスコルビン酸です。以下ビタミンC誘導体と区別してピュアビタミンCと表現します。ピュアビタミンCは、高濃度化しにくい・安定的に配合できない・肌に浸透しにくいといった特徴があり、製剤化が難しい成分です。
ピュアビタミンCの美白作用や抗酸化効果は濃度が高いほど効果も高まることが知られていますが、高濃度にすればするほど水に溶けにくく、さらに光・熱・空気に弱いため酸化しやすいという性質があります。そのため、化粧品に安定して配合することは非常に難しい成分であり、従来はピュアビタミンCではなく、ビタミンC誘導体を用いるのが一般的でした。
ビタミンC誘導体は安定性に優れる一方で、肌の中で酵素により少しずつ分解されてからビタミンCとして作用するため、効果発現に時間がかかります。さらに、高濃度に安定化して配合できたとしても、皮膚内で実際にどの程度ビタミンCに変換されているかは明らかではありません。
これに対し、ピュアビタミンCは塗布した瞬間からそのままビタミンCとして働く、いわば“即効型”のビタミンCです。したがって、安定化さえ成功すれば、ピュアビタミンCで肌に直接ビタミンCを届けることが最も効率的で効果的といえます。
ロート製薬株式会社は15年にわたる研究の末、高濃度溶解を可能にする基剤としてポリエチレングリコールを、さらに結晶化抑制成分として3-O-エチルアスコルビン酸を見出しました。この組み合わせにより、高濃度のピュアビタミンCを長期間安定に溶解することに成功し、この技術は日本で特許取得済みです。
加えて、ピュアビタミンCにはさきほど述べたように、「肌に浸透しにくい」という課題もあります。これに対してロート製薬は、分子量を小さくした処方設計と、ビタミンCを溶かしている「ベース処方」を根本から見直すことで、高い浸透性を実現しました。これにより角層深くまで素早くビタミンCを届けることが可能になっています。
このように、ロート製薬株式会社のDRX®VCコンセントレート15bは、ピュアビタミンCの高濃度・安定化・高浸透を実現した製品です。
こちらのコラムでもふれましたが、ビタミンCは美白外用薬として欠かせない成分で、小じわや毛穴の改善にも有用な成分です。
また、強力な抗酸化作用と抗炎症作用を通じて、日中の紫外線ダメージを軽減し、美容施術の効果をより長く保つためのサポート役にもなります。
食事やサプリメントだけでは皮膚に十分な量を届けにくいため、スキンケアとして直接塗布することが重要です。近年の製剤技術の進歩により、高濃度でも安定して浸透させられるようになり、日々のケアに取り入れることで施術との相乗効果も期待できます。毎日の基本成分として、ビタミンCを積極的に活用していただきたいと思います。
skinfinity clinic医師 門沙央理(かどさおり)
参考文献
1) Kawashima S, et al. Protective effect of pre- and post-vitamin C treatments on UVB-irradiation-induced skin damage. Sci Rep. 2018 Nov 1;8(1):16199.