Skinfinity clinic美容皮膚科医・美容外科医の門沙央理です。
美容皮膚科において、シミは多くの方が抱える代表的なお悩みの一つです。皮膚の色は主にメラニンとヘモグロビンによって決まり、これらの量や存在する層の違いによって色素異常が生じます。
シミの治療では、まず「どの層にメラニンが存在しているのか」を見極め、それに応じた適切なアプローチを選択することが重要です。適切な治療を行うためには、肌の構造やメラニンの仕組みを理解しておく必要があります。
そこで、本記事ではシミの種類ごとにメラニンが存在する層を解説し、それに応じた治療法をご紹介します。まずは、皮膚の構造やメラニンの仕組みを簡単に説明します。
皮膚は大きく表皮・真皮・皮下組織の三層から成り、表皮と真皮の境界には基底膜があります。メラノサイト(メラニンを作る細胞)は基底膜の直上にある基底層に存在し、やや真皮側へ突出するように位置しています。このメラノサイト内のメラノソームという小さな袋でメラニンが生成され、周囲の表皮細胞へ受け渡されます。
メラニンは通常、紫外線から肌を守る役割を果たしますが、過剰に生成されるとシミとして蓄積します。メラニンの存在部位によって、皮膚に現れる色は黒から茶まで変化します。
美容皮膚科診療において、シミの中でよく見られるものは、日光性色素斑(老人性色素斑・日光黒子)、雀卵斑、肝斑、後天性真皮メラノサイトーシス(acquired dermal melanocytosis:ADM)です。これらのシミはメラニンの存在する深さが異なり、治療の選択肢も変わります。日光性色素斑と雀卵斑は主に表皮内にメラニンが蓄積するのに対し、肝斑は基底層のメラノサイトが活性化することで生じ、ADMはさらに深い真皮内にメラノサイトが増加しています。
したがってシミの深さは以下の順に深くなります。
これに応じた適切な治療が必要になります。
近年では、複数のシミが混在する「加齢性混合型皮膚色素斑(ACP)」という概念も広まりつつあります。シミの治療には、それぞれの病態に応じた適切なアプローチが重要です。
当院では、シミの深さに応じた治療を組み合わせ、より高い効果を目指します。
シミ治療では、治療の反応性を見極めながら最適な治療法を選択することが重要です。私は診療の際、治療前に必ず画像解析装置を使用し、シミの状態を客観的に評価します。その後も治療ごとに適宜撮影を行い、目視ではわかりにくい変化も把握しながら、治療の進行を確認します。このプロセスを通じて、より正確な診断と最適な治療の提案が可能になります。
まず、メラニンがどの層に存在するかを見極めます。肝斑やADMなどの深い層のメラニンがなく、表皮内にメラニンが存在する日光性色素斑や雀卵斑がある場合には、レーザー治療(ピコハイ、ピコウェイスポット照射)や光治療が有効です。特に雀卵斑は表皮の浅い部分にメラニンが存在するため、どちらの治療でも比較的きれいにメラニンを除去できます。
日光性色素斑の治療では、シミの種類によって適切な治療法を選択することが重要です。
・大斑型の日光性色素斑や、深い(表皮突起が延長していてそこにメラニンが存在する)色素斑 → ピコハイ、ピコウェイ・スポット照射
・小斑型の色素斑が散在する場合 → 光治療(フォトフェイシャル:ルメッカ、M22)
シミ治療中に特に問題となるのが、治療を加えたことで新たな色素異常を生じてしまう炎症後色素沈着(PIH)です。
真皮の浅い部分を強く刺激するとPIHを引き起こす可能性が高く、特に真皮に影響を与えるレーザー機器ではリスクが上がります。一方で、光治療は真皮への影響が少なく、PIHのリスクを低減できます。
日光性色素斑に対するレーザー治療では、ナノ秒(Qスイッチ)レーザーでは約4割のケースでPIHが発生しましたが、ピコ秒レーザー(ピコハイ・スポット照射、ピコウェイ・スポット照射)は真皮に影響を与えにくいため、PIHのリスクを抑えながら高い治療効果が期待できます。
ただし、ピコ秒レーザーはPIHのリスクを低減できますが、真皮に炎症がある場合、cytokine promoted pigmentation(CPP)と呼ばれる再発が起こることがあります。そのため、必要に応じて複数回のレーザー治療や真皮環境を整える治療を行うことが重要です。また、表皮の深い部分にメラニンが存在する場合も、繰り返しのレーザー治療が必要になることがあります。
レーザーや光治療で十分な効果が得られた後は、3〜4ヶ月に1回のペースで光治療を継続すると、皮膚の質感が向上し、小ジワの改善も期待できます。これは、光治療の温熱効果により、表皮のターンオーバー促進や真皮の若返りが促されるためです。
しかし、複数回の治療を行っても改善しないシミが残ることがあります。その場合、メラニンが少なくレーザーや光治療の反応性が低い可能性や、真皮の環境を整える必要があることが考えられます。
そのようなケースでは、ピコハイトーニングや532nmDOEピコハイ・フラクショナルを用いて少しずつメラニンを減らす、あるいはシルファームで基底膜や真皮環境を整えることで、しぶといシミの改善を目指します。このように、治療の切り替えが必要になることもあるため、光治療は単に繰り返せばよいものではなく、経過をしっかり追いながら最適な治療法を選択することが重要です。
当院では、全例医師が光治療を担当するため、肌の状態を的確に評価しながら、安全で効果的な治療を提供しています。
肝斑
肝斑は、メラノサイトが過剰に活性化し、真皮環境の影響を受けながら色素沈着が進むシミの一種です。そのため、単独の治療では効果が不十分であり、段階的なアプローチが重要となります。
・活動性の高い肝斑
活動性の高い肝斑では、まずシルファームやリバースピールを用いて真皮環境を整えつつ、ピコハイトーニングを併用し、メラニンの生成を抑える治療を行います。これにより、メラノサイトの過剰な活性を抑制しながら、着実に色素沈着を改善していきます。
・安定した肝斑
メラノサイトの活動がコントロールされ、肝斑が安定している場合は、肝斑の保存的治療を継続しつつ、目立つ日光性色素斑の除去を行うことが可能です。ここで重要なのが、光治療の適切な活用です。
光治療を適切に活用できるのは、医師が施術するからこそ。光治療は照射方法や設定次第で肝斑を悪化させるリスクがあるため、照射中も肌の状態をしっかり観察し、細かく調整することが不可欠です。
ADM
ADMは真皮内にメラノサイトが増殖しているタイプのシミです。通常の光治療では効果がなく、真皮層まで届く高出力のレーザー治療が必要となります。
ナノ秒(Qスイッチ)レーザーやピコ秒レーザーを高出力で照射し、真皮内のメラノサイトを破壊することでシミを薄くしていきます。しかし、高出力での照射はPIHや色素脱失のリスクもあるため、慎重な治療が求められます。当院では、4〜6ヶ月ごとの間隔を空けながら慎重に治療を進めます。
シミと一口に言っても、種類やメラニンの存在する層によって適した治療法は異なります。
そのため、適切な診断を行い、個々のシミに合った層別治療を選択することが、美しい肌を取り戻すための鍵となります。
当院では、最新の医療技術を駆使し、お客様一人ひとりに最適な治療プランをご提案いたします。シミでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
Skinfinity clinic美容皮膚科医・美容外科医 門沙央理