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ドクターコラム

酒さと腸内環境の意外な関係2025.3.3

はじめまして。Skinfinity clinic美容皮膚科医・美容外科医の門沙央理です。

 

日々の診療をしていると、赤ら顔、特に酒さの方を診ることが多いです。自覚症状は、「顔が赤い」というよりも、「とても乾燥しやすい」「何を使っても肌が荒れやすい」といった悩みが中心になることも少なくありません。酒さの一般的な治療を続けても赤みがぶり返してしまう方が多く、その原因のひとつとして腸内環境が関与している可能性が指摘されています。そこで、腸内環境と酒さの関係に注目し、このコラムを書くことにしました。

 

酒さと腸内環境の意外な関係とは?

酒さは、顔の赤みやほてり、小さな膿疱が特徴の慢性炎症性皮膚疾患です。これまでに遺伝的要因や免疫系の異常、神経血管系の異常などが原因として考えられてきましたが、最近の研究では腸内環境(腸内細菌)との関係が注目されています。腸内環境の乱れが皮膚の炎症を引き起こす「腸-皮膚軸(Gut-Skin Axis)」という考え方が浮上し、酒さとさまざまな消化器疾患との関連が指摘されています。

 

酒さと関連する腸の疾患

研究によると、酒さの症状がある方々では以下の消化器疾患の発症リスクが高いことが報告されています。

このような消化器疾患と酒さの関連の背景には、腸内細菌のバランス異常や腸粘膜の透過性(いわゆる”リーキーガット”)の変化が関与している可能性があります。

 

特に注目される「SIBO」との関係

SIBO(小腸内細菌異常増殖症)は、小腸内で通常よりも多くの細菌が繁殖する状態で、ガスの過剰産生や腸の炎症を引き起こします。ある研究では、酒さの症状がある方々の半数以上がSIBOを有していたという報告もあります。

興味深いことに、海外ではSIBOを治療するためにリファキシミンという抗生剤が使用され、酒さの症状が大幅に改善し、その効果が長期間持続したという結果が得られています。しかし、日本ではSIBOと診断すること自体が難しく、抗生剤を用いた治療が一般的ではありません。

SIBOの診断には小腸吸引液培養や呼気テストが用いられますが、特に日本では標準的な診断方法として確立されておらず、検査の実施が限られているのが現状です。そのため、食事療法やプロバイオティクスの摂取など、腸内環境を整えるアプローチが現実的な治療法となるでしょう。

 

ピロリ菌と酒さの関係

ピロリ菌は胃に感染し、慢性胃炎や胃潰瘍を引き起こすことで知られていますが、酒さとも関連がある可能性があります。一部の研究では、酒さの症状がある方々でピロリ菌感染の割合が高いことが報告されており、ピロリ菌を除菌することで酒さの症状が改善したケースもあります。

ただし、ピロリ菌と酒さの関係については研究結果が一貫していないため、現時点では因果関係は明確ではありません。

 

腸内環境を整えることが酒さの新しい治療法に?

このような研究結果を踏まえると、腸内環境を整えることが酒さの新しい治療戦略になる可能性があります。

おすすめの腸内環境改善法

  1. 発酵食品や食物繊維の多い食品を摂取し、腸内フローラを整える
  2. プロバイオティクス(乳酸菌など)を積極的に摂る
  3. グルテン制限:セリアック病との関連も考慮し、小麦製品を減らしてみる
  4. 低FODMAP食:IBSやSIBOが疑われる場合、小腸で発酵しやすい食品(玉ねぎ、ニンニク、小麦、乳製品など)を控える
  5. ストレス管理:腸内細菌はストレスの影響を受けやすいため、リラックスする時間を作る

 

まとめ

酒さは皮膚だけの病気ではなく、腸内環境と深く関わっている可能性があります。特に SIBOやピロリ菌感染との関連が示唆されており、腸内環境を改善することで症状の軽減が期待できます。

レーザーや光治療などの美容治療をうまく活用しつつ、腸の健康にも意識を向けることで、より包括的な治療が可能になるかもしれません。

美容医療と腸内環境の改善を組み合わせたアプローチをぜひ試してみてください。

 

参考文献