インスタグラムやTwitter、ブログなどのメディアを通して、美容クリニックのビフォーアフター写真を以前にも増して頻繁に見かけるようになりました
特にインスタグラムは全盛ともいえる時代にさしかかり、各美容クリニックもその影響力の強さに気づき始め、盛んに投稿するようになっています。
10年程前から美容クリニックのドクターたちもアメブロなどを中心としてブログをこまめに書くようになり、情報の発信を盛んに行う傾向になり始めたような気がします。当時は大手美容外科所属のドクターには、毎日1つ以上の記事をアップするのが義務という通達が出ていたほどでした。
その集客力は従来型の一般的な広告よりも影響力や集客の質が勝るため、広く一般的になりました。同時に記事を書くネタとして必要な、症例写真と呼ばれる治療前後のビフォーアフター写真が投稿される件数も格段に増えつづきてきました。
その後のインスタグラムの登場で海外の美容クリニックの著名なドクターがそれを広告として利用するようになり、「ビフォーアフター写真」がさらに注目を浴びるようになりました。
ビバリーヒルズで世界中のセレブを顧客に持つDr.Simon Ourianは特に有名で、現在のインスタグラムフォロワー数は350万人を超えており、その影響力は計り知れません。
https://www.instagram.com/simonourianmd1/
Dr.Simon Ourianの発信を見習って日本国内でもインスタグラムをうまく取り入れて発信をするドクターが数年ほど前から出始めました。とても写真も美しく、いわゆる「インスタ映え」する症例写真が目に飛び込んできて印象的な投稿が目立つようになりました。
写真の撮影や加工の専門の知識を持った人材を常勤として採用しているクリニックも増えましたし、SNS専門のチームを組んでいるクリニックもあります。ドクターが診療の片手間に写真の整理から記事のアップまでをしていた時代とは比べものにならないほど、最近ではますます投稿の内容は高度化してきています。
以前にも増して「インパクトのある症例写真」が目に飛び込んでくる機会が急増してきた今、どのようなことに気をつけて症例写真を見ていく必要があるのでしょうか。
魅力的な変化の症例写真を見たとき、
「私もこうなりたかった」
「こんな変化がほしい」
という気持ちがわいてくると思います。その段階で注意すべきことは以下の4つです。
①は特に重要です。視覚的にわかりやすく理想的な変化を目の当たりにすると、「私もこうなりたい!」と「みつけた!」という高揚した感覚になりがちです。例えその変化をするためには甲乙つけがたい様々な手段があったとしても、比較分析する過程を忘れてしまい、「こうなるにはこのクリニックに行けば私もこうなれる!」という短絡的な思考になりやすくなってしまいます。結果的に最もコストパフォーマンスが悪く、リスクの高い治療を選んでしまったなんてことも実際に起こり始めています。
「このような変化が美容医療では可能だという事実を認識した」というところでとどめ、他にもある様々な手段の中からどの手段を選ぶのかは、それぞれの治療のメリットと欠点を照らし合わせて充分に検討する段階を必ず踏む必要があります。
②の割合についても注意が必要です。写真のような変化が100人の方に治療を行った場合80名の人が得られるものなのか、それとも100人行っても2~3人の人しかそうならないのかといういわば、「有効率」の数値が一緒に記載されていることはまずありません。
この業界では「ホームラン症例」という言葉もありますが、満足度のそれほど高くない治療だったとしても、最もよい変化となった数少ない人のビフォー写真の中からなるべく悪く見えるカットを選出して、アフター写真の中からなるべくよく見えるカットを選出してその二つをならべることで、すばらしいビフォーアフター写真ができてしまいます。
④の撮影条件にも注意しなければなりません。たとえば顎の下のたるみ感や脂肪のつき具合を捕らえたビフォーアフター写真では、「首と顎の位置関係が前後で統一されているか」に注意しなければなりません。
みなさんもご自身の顔を横からでカメラで撮影してみるとわかりますが、顎の位置をほんの少し前に数センチ出すだけでも顎の下はスッキリと見えます。これは写真を作成したクリニック側の担当者が意図的に行っている場合と、無意識に行われている場合の両方があるかと思いますが、
「そもそもこの写真は顎の位置が全く違うよね・・・」
という症例写真はネット上でも頻繁に見かけます。
顎下の例はほんの一例ですが、二の腕やおなか、ヒップ、太ももなどの写真でも少し体勢を変えるとよく見えてしまう同じようなポイントがありますし、顔のたるみやクマの見え方、シミの見え方なども同じ日に同じ場所でとった写真であっても取り方によってよく見えたり悪く見えたりします。
インスタグラムは皆様の投稿の内容がかなり洗練されてきて数も増え、見る物を飽きさせません。
美容クリニックのほとんどがインスタグラムでの発信を行っている時代となりましたが、「インスタ映え」が投稿の前提 のような状態ですので症例写真を眺める際には前述した注意点を頭の片隅においておくことを忘れてはいけません。
しかし一方で、そほ豊富な情報量の中には自分にとって有益な情報が埋もれているメディアであることも事実ですので、気になる投稿を見つけた場合はそれについて良く調べてみる一手間はかけてみる価値はあると思います。