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ドクターコラム

非ハイドロキノン系美白成分の特徴と使い分け2025.12.3

スキンフィニティクリニック医師の門沙央理です。

近年、美白治療では 長期使用が可能で刺激の少ない「非ハイドロキノン系」成分 の重要性が高まっています。

かつて美白剤といえばハイドロキノンが中心でしたが、ハイドロキノンは長期使用や広範囲での外用が推奨されず、かぶれなどの副作用も一定数みられます。
レーザー後の短期使用としては非常に優れた成分である一方、肝斑や色むら・くすみのように継続的なケアが必要なケースでは、非ハイドロキノン系美白剤が重要になります。

代表的な非ハイドロキノン成分として システアミン、ルシノール、メラジル があり、当院では特に システアミンとルシノール を積極的に使用しています。

本稿では、この2成分の作用の違いについて解説します。

シミ(メラニン)が形成される経路

シミ(メラニン)は、チロシナーゼ(TYR)や TRP-1/2 など複数の酵素が関与する 多段階の反応 を経て生成されます。
途中でユーメラニン(黒〜茶色)とフェオメラニン(黄赤色)の経路に分岐し、最終的にはこれらが混在した 複合メラニン(Mixed melanin) として沈着します。多くのシミが複雑に見えるのはこのためです。

美白剤は、メラニン生成経路のどの段階に作用するかが成分ごとに異なります。
また生成経路そのものを抑える成分に加えて、合成前のメラノサイト活性化や、合成後のメラノソーム輸送・還元に作用する成分もあります。
例えば合成後に働く成分として、メラジルはメラノソームの輸送を抑える作用を持ち、ビタミンCは生成されたメラニンを還元する働きがあります。

このように、美白剤はそれぞれ異なる仕組みでアプローチします。


ルシノール

ルシノール(4-n-butylresorcinol)は、ハイドロキノンに次ぐ強力な美白成分として広く知られ、非ハイドロキノン系の中ではエビデンスが豊富です。

作用部位は TYR(チロシナーゼ)TRP-2 の2か所で、いずれもメラニン経路の上流(入口近く)に位置します。

このためルシノールはこれから作られるメラニンを減らす作用に優れています

つまり、
・表皮の浅いシミ
・軽いくすみ
・新しい色ムラ
のような 新規メラニン生成に依存するタイプに特に効果が出やすいです。
刺激性が少なく日常的に使用できる点も長所です。

システアミン

システアミン(Cyspera®)は、もともとヒト体内にも存在するアミノチオールで、
美白成分の中ではメラニン生成経路の上流から下流まで幅広く作用するのが特徴です。

複数の段階を網の目のように阻害するため、
・濃く停滞したシミ
・複雑な色むら
といったすでに蓄積したメラニンに対して動きが出やすいのが特徴です。


ルシノールとシステアミン 当院での使い分け

どちらも非ハイドロキノン系で、安全性が高く有効な美白成分です。なお、両者を直接比較した臨床試験は現時点ではありません。

当院ではシミの種類や深さ、刺激への強さに応じて、ルシノールとシステアミンを適切に使い分けています。
刺激が少なく日常的に使いたい場合はルシノール、濃く停滞したシミや複雑なくすみにはシステアミンを選択することが多いです。
また、作用する段階が異なるため 両者を併用して治療を進めていくことも可能です。

シミの性状に合わせて適切な成分を選ぶことで、外用治療の効果は大きく変わります。
当院では患者様一人ひとりの肌状態に応じて、最適な治療をご提案しています。

 

参考文献
1) Solano F. Melanins: Skin Pigments and Much More—Types, Structure, Properties and Formation.Materials. 2012;5(9):1661–1687. doi:10.3390/ma5091661.
2) Katagiri T, et al. Novel melanogenic enzymes inhibitor for controlling hyperpigmentation.Proceedings of the 20th IFSCC Congress; 2007.