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ドクターコラム

毛穴治療におけるピコハイVMLAフラクショナルの役割2025.9.12

スキンフィニティクリニック医師の門沙央理です。

毛穴の拡大はいろいろな要因が関与すると言われていますが、明確な規定はありません。
ここでは、どのように分類すると治療を決めやすいか、治療法を軸に分類を考え、さらにその中でピコハイVMLAフラクショナルがどのようにアプローチしているのかを整理していきます。

 


毛穴拡大の分類:皮脂角質タイプか、真皮のゆるみタイプか


① 皮脂・角質由来型


◆①a. 皮脂優位型
機序
皮脂分泌量が多いと毛穴(毛包)内部の圧が上昇し、毛穴の入口が押し広げられて拡張して見えます。
さらに皮脂と角質が混ざり合って角栓が形成され、毛穴の開大がより助長されます。また毛穴の開口部が空気に触れると皮脂(特にスクアレン)が酸化し、黒ずんで見えるようになります。

治療アプローチ
皮脂抑制が第一です。一般的には、イソトレチノイン内服、スピロノラクトン内服、外用トレチノイン、スキンボトックスなどになります。酸化抑制としてアゼライン酸も補助的に有用です。

◆①b. 角質優位型
機序
毛穴開口部周囲の角質停留・肥厚によって毛穴の「縁取り」が強調されることにより毛穴が目立ちます。

これは、皮脂由来の脂肪酸が原因となり微小炎症を起こし角化異常を起こしている場合や、乾燥によってターンオーバーが乱れ角質肥厚が起こる場合などがあります。角栓が詰まっていないのに、毛穴が目立つタイプはこのタイプの可能性もあります。

治療アプローチ
角質正常化を目指す治療です。外用トレチノイン、外用アゼライン酸、適度なケミカルピーリング・レーザー、保湿・バリア機能の維持などがあげられます。

注意点
・過剰な炎症は角質の反応性肥厚を招き、毛穴の縁取りをかえって厚く・硬くします。
強い治療によるバリア障害や乾燥はTEWL(経表皮水分蒸散量:皮膚最外層である角質から蒸発する微量な水分量)を上昇させます。乾燥角層は光の乱反射が強くなり、毛穴周囲の凹凸や縁取りがコントラスト強調されるため、毛穴境界をより目立たせます。
⇒したがって角質優位型では、「強く削る」治療は悪化の恐れがあるため注意が必要です。
・弱い刺激を繰り返し与えて、角質・真皮を少しずつ作り替える=長期的リモデリングが有効です。


② 加齢・弾力低下型

機序
加齢や光老化によって真皮のコラーゲン・エラスチンが減少・変性し、皮膚の支持構造が弱まります。その結果、毛穴の入口が拡大して見え、さらに毛穴が縦方向に拡張し、帯状に連なって見えることがあります。

治療アプローチ
真皮のリモデリング(=コラーゲンやエラスチンなどを作り直し、肌のハリを改善する働き)系マシン
補助として外用トレチノイン/レチノール(コラーゲン増生)

 

混合型

実際の臨床では、きれいに分類できないことが多く、混合型が多いです。①a. 皮脂優位型+①b. 角質優位型、①b. 角質優位型+②加齢・弾力低下型はよく混合していることがあります。

 


ピコハイVMLAフラクショナルはどの毛穴に効果的か

ではここからは、ピコハイVMLAフラクショナルが①a. 皮脂優位型、①b. 角質優位型、②加齢・弾力低下型においてどのような機序でアプローチするのかを考えていきます。

まず②加齢・弾力低下型ですが、このタイプの主因は真皮の支持構造低下なので、真皮リモデリングに直結する治療であるピコハイVMLAフラクショナルはもっとも効果的です。
ピコハイVMLAフラクショナルはLIOB(マイクロバブルが形成される現象)主体で熱ダメージが少なく、真皮層の細かいリモデリングが可能となります。また②加齢・弾力低下型であっても、加齢や光老化でターンオーバーが乱れ、角層が厚くなる/不均一になっている場合は、ターンオーバーを正常化する意味で、表皮のリモデリングも必要になります。

続いて①a. 皮脂優位型ですが、ピコハイVMLAフラクショナルの1064 nmの深達度(数mm)は十分皮脂腺に届き得ますが、1064 nmはヘモグロビンや水への吸収が主であり、皮脂や皮脂腺を特異的に選択吸収するわけではありません。しかしピコハイVMLAフラクショナル(第4層照射:真皮深層照射)によって生じるマイクロバブルによって、皮脂腺周囲への微細刺激が皮脂抑制に寄与する可能性があります。当院で治療を受けられた方の中で、照射後に皮脂が減ったと実感される方も多くいらっしゃいます。

①b. 角質優位型では、角質の反応性肥厚をおこさないように調節しながら照射していきます。つまり、上記で述べたように弱い刺激を繰り返し与えることで角質・真皮を少しずつ作り替えるように、主に深い層をメインで照射します。また、施術の間隔を適切にあけ、経過を確認しながら回数を重ねていくことが大切です。

 


まとめ

毛穴拡大には「皮脂・角質由来型」と「加齢・弾力低下型」、そしてそれらが混じり合う「混合型」があると考えます。
タイプごとに治療の方向性は異なりますが、実際には明確に分けられないことも多く、複数の要素が重なっているのが現実です。

ピコハイVMLAフラクショナルは、真皮リモデリングを主体としつつ、皮脂腺や角質の改善にも働きかけられるため、こうした複雑な状態にも幅広く対応できる治療です。ただし毛穴治療はどの治療法でも必ず改善するわけではなく、レーザーによる引き締めだけでは限界があることもあります。とくに①皮脂・角質由来型は②加齢・弾力低下型に比べてコントロールが難しい傾向があり、皮脂抑制や角質ケアを組み合わせることがとても大切です。

毛穴の原因は複雑に絡み合っているため、個々の肌に合わせて工夫を重ねていくことで、安全に長期的な改善を目指すことができます。

 

 

参考文献

1) Dong J, et al. Enlarged facial pores: an update on treatments. Cutis. 2016 Jul;98(1):33-6.
2) Lee SJ, et al. Facial Pores: Definition, Causes, and Treatment Options. Dermatol Surg. 2016 Mar;42(3):277-85.