こんにちは。Skinfinity Clinic院長の橋本です。
近年では美容皮膚科で提供される治療メニューも膨大な種類になりました。各クリニックがそれぞれの考えでSNS等で発信する傾向も強まったこともあり、様々な情報が錯綜するようになりました。「一体、自分はどの治療を受ければ良くなるのか」と混乱するお客様も増えている印象です。
情報を発信する側としては、医療機関として守るべき安全性や効果面に関して裏付けの取れたエビデンスに基づいた情報を発信する姿勢が問われますが、多くのクリニックのSNSやYouTubeは外部の専門業者に依頼して製作している広告的な要素の色合いが濃くなってしまいました。そのため、何気なく目に飛び込んでくるSNSの情報から『本当に自分に必要な正しい情報』に出会うことは難しくなっていると感じます。
様々な美容クリニックを受診して、数多くの治療経験があるような美容医療にお詳しいお客様もいらっしゃいますが、多くの方はそのような状況ではありません。上手に作りこまれた症例写真や動画を見ると、やってみたいという気持ちにさせてくれるのはわかりますが、その治療が自分に必要なのかどうかは全く別の軸でしっかりと吟味しなければなりません。
例えば最近では『SNSで見たソフウェーブというマシンを受けてみたい』というお客様が多いですが、顔のタルミというのは様々な要因が複合的に影響して症状をだしておりますので、もちろん他の治療の方がその人にとっては効果的というケースもございます。
「ソフウェーブは新しいタルミ治療のマシンだと聞いたので、自分はタルミが気になるので受けに来た。」という安易な考え方は危険です。限られた時間や費用で結果を最大限に出すためには、よりタルミ症状の原因となっている部分に的確にアプローチする治療を選択することが大切なのです。今回は当院で行っているタルミ治療を例にとって、症状を引き起こす原因を見極める重要性についてお話します。
顔のタルミの原因は大きく分けると
の3つが3大要因だと私はとらえています。その他にも靱帯の緩みや顔面骨の萎縮などの細かな要因はよく言われることですが、これらの症状は我々東洋人は欧米人と比較してもあまり顕著な変化ではないケースがほとんどです。そのため、最後の微調整としてこれらの部分の調整を行うケースもございますが、まず大切なのは3大要因に対するアプローチです。
お顔のタルミの症状が気になり始めると、ほうれい線の深まりが気になったり、フェイスラインのもたつきが出てきて輪郭が四角いイメージに変化し始めます。同時に口角から下の方に伸びるマリオネットラインというシワも出現してきます。このような症状を治療していくにあたり、どのような原因でその症状が出ているのかを的確に現状把握することが非常に大切です。
先ほどのタルミの3大要因のうち、「脂肪の減少」という要素がが全くない人に対してボリュームを補うようなヒアルロン酸注射を無計画に行ってしまえば、それはもちろん理想的な仕上がりとは程遠くなります。また、皮膚よりも皮下組織や筋膜周辺の緩みが主な原因である人に対して皮膚表面しか作用しないマシンを一生懸命加えたとしても、費やした労力や費用の割に効果を実感できないということも起こりえます。
実際にはタルミの要因は1つとは限らずに複数が複合的に作用しているケースも多いため、さらにその見極めは難しくなりますがその重要性は変わりません。
あくまで他人の「このマシンがタルミに効いた」という一例に過ぎないSNS情報は、自分にとって最適とは限らないのも当然のことです。症状を的確に把握し、それを引き起こしている要因を顔面内部の解剖的な変化から推測し、必要な治療のみを的確に加えていくことが『自然なタルミ治療』の大きなポイントとなりますが、これには担当する医師の経験と技術に依存する部分が大きくなります。
どのような治療を加えていくのかに関しては、医師のセンスと考え方によって違うためクリニックによって治療方針が変わってくるものと思いますが、当院ではそれぞれのタルミの要因に対して最適と思われる治療法を選択しております。
私が目指すタルミ治療はとにかく「自然な変化」に付きます。引きあがってシワがなくなっても以前の顔と違ってしまっては周囲の友人からは「変になった」と言われてしまいます。タルミ治療は特に、別人を目指す整形的な治療ではあってはならないというのが私の考えです。加齢によって起こった変化を一つ一つ元の状態に戻していく、そういった緻密な作業がタルミ治療なのです。
どのような治療を行っているのかをまとめてご紹介します。
いわゆるハイフ(HIFU)系の治療の最新世代の機種がこのウルトラフォーマーMPTというマシンです。当院では第三世代のウルトラフォーマー3というマシンから長らく使用してきた人気機種で、すべての例で私が責任をもって照射しております。ハイフ系のマシンを受けても変化がなかったという声や、コケてしまったという声、しびれなどの副作用が出てしまったなどの声などがSNS上でも散見されますが、これはすべてが照射方法の誤りもしくは未熟さからくる結果です。
この系統のマシンの中でもウルトラフォーマーMPTという機種は、皮下および筋膜周辺の緩みに対してしっかりとした修復エネルギーを与えることができるため私は好んで使用しています。コケ感が出るような嫌なリスクは回避すべきですし、回避可能です。
照射前(左)と1回照射後から2か月後(右)の比較写真です。
直後からスッキリとした実感が得られますが、1~2か月後はさらに引き締まりが加わっていきます。緩みがではじめた皮下組織~筋膜周辺の部分を強化するイメージで私は照射していますので、直後の変化ももちろんですが、その後の長期的なタルミ予防効果も加わっていきます。
この機種は目元用の繊細なカートリッチも優秀で、上まぶたや下まぶたのタルミの引き締めも可能です。ダウンタイムも全くなく直後からスッキリ感の感じられる人気の治療です。大切なご用事の直前でもおすすめです。
特殊な構造の溶ける糸を用いたリフトアップ施術です。私は15年以上もこのスレッドリフトをほぼ毎日行って参りましたが、スレッド(糸)の構造や素材は従来よりもかなり進歩しました。溶ける素材をあえて使用するのは緩みが出て弱くなった皮下構造を強化する目的も兼ねた治療だからです。
溶けながら周辺にコラーゲン造成を引き起こして、弱まった皮下構造を強化しつつ、重力によって下垂した皮膚を本来の位置に引き上げることがこの治療の狙いです。直後から引きあがる即効性も魅力の治療ですが、定期的に必要箇所に入れていくことでタルミも非常に起こりにくく完成されていくように計画してデザインしていきます。
初回は片側3本~5本ずつのしっかり目を入れることをお勧めしておりますが、その後のメンテナンスは必要箇所のみ1~2本ずつ追加するというのが多い流れです。
このマシンは皮膚自体の引き締めやコラーゲン造成に特化したものです。皮膚の真皮層を70℃近い高温に瞬時に加熱することで皮膚の引き締めと弾力の回復を実感できる機種です。皮膚の下にはエネルギーが発生しない特殊な構造をとっていますので、お顔の脂肪の減少を一切起こす心配がないのでコケ感が気になる方にもおすすめできます。肌質も非常に向上しますので人気のマシンですが、皮下の緩みがメインの症状の場合には第一に選択することはありません。
ソフウェーブは照射方法でもかなり結果が変わるマシンの一つです。当院では全例で私が照射しておりますが、看護師2名も助手として3名体制での照射を行っています。非常に手間のかかる機種ではありますが、その効果は大変魅力的でリピート率も非常に高い治療です。
お顔は加齢変化とともに脂肪は減少することもあれば、下に下がることもあります。それにより顔に凹凸感やくぼみ、コケ感が生じるとともに、表面の皮膚をさらにたるませる要因ともなります。加齢によって失われたボリュームは失われた量を的確に補充することは、非常に自然な変化をします。
入れすぎて膨らみ過ぎた「ヒアルロン酸顔」と呼ばれる状態は失敗例で好ましい変化ではありませんが、的確に注入された場合は周囲の人も違和感を感じない自然な変化でそのメリットは大変大きくなります。
ヒアルロン酸の持続は10年以上前では数か月で効果がなくなってしまうものばかりでしたが、その時代と比較しても非常に効果持続は長くなりました。現在使用しているヒアルロン酸は1年半~2年近く持続効果を持つものが主流ですので、コストパフォーマンスも高い治療に変わってきました。
当院では加齢に伴うボリュームの減少に対する補充にはヒアルロン酸注射を第一選択としております。理由は脂肪注入と比較した場合の安全面だけでなく仕上がりの面で勝るためです。万が一のリセットしたい状況に際しても、ヒアルロニダーゼという成分の「溶かす注射」が存在しているという安全性に加え、様々な状況に合わせた質感や特性の異なるヒアルロン酸製剤を使い分けることで、より自然な仕上がりを目指しやすくなったことが大きな理由です。
顔のタルミ治療を15年以上専門的に行ってきた経験からしても、タルミ治療は非常に奥が深いと感じます。それは人それぞれタルミの原因となっている要因が全く異なり、上記のような治療をどのような順番でどのようなアレンジを加えながら行うのがベストなのかも千差万別であるためです。現状をしっかり把握し、かつその原因を的確に見極めることからスタートですが、そこからはお客様との仕上がりのイメージを共有しながら、そこに向かって一緒に必要なものを的確に加えていきます。
SNSは「こんな治療があるのか」という受診の動機とするにはとてもよいきっかけになるものだと思います。しかしながら、訪れる施設がしっかりと自分の症状を見極めて、必要なものを的確に加えてくれる技術を提供するところなのかどうかは全く別問題として重要です。
その他私が感じる注意点は「過剰に批判や否定する投稿」をあまり信じすぎないということです。SNSはあくまで一個人の意見の発信でしかないですが、業界全体の統一見解(コンセンサス)とは程遠い内容の発信もよく見受けられます。コンセンサスを否定することにより一気に自分の意見に脚光を浴びやすいという背景から、いわゆる炎上商法としてよく使われやすい手法でもあるためです。
ある一つの内容を強く否定するにはその分野に対して深い見識と経験、エビデンスが必要です。「少し使ってみたけど変になった」「○○先生がそのように言っていた」というような緩い理由で批判している投稿も時折見かけますが、その治療や分野を一生懸命研究して結果を出してらっしゃる先生に対して大変失礼な行為もあたります。
最近のSNSでは特に、発信者が信頼に足る人物なのかも見極めなければいけなくなっています。