お顔には中顔面(ちゅうがんめん)と呼ばれるエリアがあります。目から口までの間に相当するエリアで、その名の通りお顔を目と口の高さで3つに分けた時にその中央に位置する部分です。
この中顔面の部分の加齢変化はクマやほうれい線、マリオネットラインと呼ばれる症状に影響しますので、美容皮膚科で治療を行うにあたっては非常に重要な部分になります。
中顔面は顔全体の皮膚の緩み(タルミ)の症状の影響も受けやすい部分ですので、タルミに対する対策ももちろん必要です。当院ではあらゆる治療を的確に加えてタルミに対する対応も行っております。
しかし中顔面はタルミという皮膚や皮下組織の症状だけではなく、「脂肪の加齢変化」にも特に目を向けなければなりませんが、治療がなかなか容易ではないため、あまり積極的に治療がされていない部分となっています。
中顔面の脂肪は頬正面(鼻の横あたりのエリア)の若々しい立体感を作り出していた要素としてとても大切です。ところがこの部分に存在する脂肪は加齢変化により量が減少するばかりでなく、重力により脂肪を取り囲む袋自体が下に垂れ下がってきます。
↑脂肪の袋(メーラーファット)が加齢変化により垂れ下がるイメージ図。実際はもっと小さないくつかの区画にわかれている。
頬の部分の脂肪が減少して、脂肪の袋が下がることにより、まずは目の下の部分あった綺麗な若々しい立体感がなくなりはじめ、やがてくぼみまでになっていきます(下の写真の〇のエリア)
それと同時に、これまではなかった膨らみがほうれい線のすぐ上から口に横にかけて出現してきます(下の写真の矢印のエリア)。
これらの変化が目の下のクマのようなやつれた印象に加えて、口元にもたつきとほうれい線の影の入りやすさを引き起こしますので、加齢による変化として感じられます。
このような症状の場合、美容クリニックでは目の下のくぼんでいる位置やほうれい線の位置にヒアルロン酸などの注射を行って影を埋め立てる治療が行われがちです。
当院でももちろんヒアルロン酸注射による治療をよく行っていますが、的確に脂肪が減少しているエリアと減少量を把握することが大切です。脂肪自体の減少というよりも袋の位置の下への移動という症状がメインの方にボリュームの補充だけで仕上げてしまうと必ず不自然な印象となります。加齢変化により以前にはなかった膨らみが出現しているわけですが、その周辺を膨らませて埋めてているにすぎないためです。
中顔面のキレイな立体感を作り出していた脂肪の袋の垂れ下がりに対しては、その有効な治療法自体があまり存在しないとされているため、治したい変化ではあるけれども根本的なアプローチはあまり勧められることが少ないのが現状だと思います。
私はこの中顔面の脂肪の垂れ下がりの症状に対して、2012年から積極的に根本的な治療を行ってまいりました。下がった脂肪が本来存在した、「あるべき位置」に戻す治療です。
この写真の方のように、頬の脂肪が垂れ下がった症状がメインの場合、目の下のくぼんで見える部分にヒアルロン酸などのボリュームを加えると、クマは薄くなりますが、口元のもたつきは重みが加わることでさらに出やすくなります。
そのため、深まりやすくなるほうれい線に対してもヒアルロン酸をさらに入れる必要がでてきますので、以前のお顔よりは全体的に大きくなってしまいます。
このような例では下がった脂肪の袋を元の位置に戻す治療を行います。
スレッドリフト(糸のリフト)3本ずつを使用しています。直後ですのでややムクみ感は残りますが、すでに口元に下がっていた脂肪のボリュームは本来あるべき頬の立体感を作り出す位置に戻っていて口元がスッキリしています。目の下のくぼみも同時に改善しています。ヒアルロン酸や脂肪溶解注射等の他の治療は一切行っていません。
糸は溶ける糸を使用しますが、周辺のコラーゲン増生をしっかりと起こしてくれるタイプのものを独自に考案した特殊な入れ方で適切な位置にいれていきます。時間の経過とともにより本来あるべき位置に脂肪をとどめるための支えがしっかりとしてきます。この治療開始当初よりも糸の素材は進化し、入れ方も私の中で進化させ続きてきました。
特にこの方は脂肪(メーラーファット)の垂れ下がりの症状がメインの方ですので、並べると変化はわかりやすいですね。当院オリジナルの治療法です。
治療時間は両側で10分程度で終了します。